数字は「抱える」のではなく「持てる」ものを(1)

大きすぎると目指す方向を見失って動けなくなる。

だったら、そこに至るまでの道を小分けにすればいい。

「5年後までに売上を5倍にせよ。」


こんな目標があなたに課せられたら、呆然としますよね。

ただ、それはあなたにとっては大きすぎる目標でも、社長にとってはフツウのことかもしれません。

逆に、「次の四半期は10%成長必達だ」というのは、あなたにとっては十分「見える」数字かもしれませんが、新人のメンバーにとってはどうやれば良いか全く見当が付かない非現実的な数字に見えるかもしれません。


数字というのはあくまで数字。

それを見る人によって、感じ方は千差万別です。


メンバーにとって「適切な」目標を持たせましょう。


数字を「手触り感のあるもの」にする


営業マネージャーであるあなたの目標はチーム全体の目標なので、相対的に「大きな」ものであるはずです。

  • 単位:大きい(売上、粗利など)
  • 数字:大きい(億円単位、百万円単位など)
  • 期間:長い(四半期、年間など)

それをそのままメンバーに割り振っても、一人ひとりにとってはまさに「手に余る」目標となってしまいます。

それはつまり、現実感・手触り感のない「数字」でしかないのです。


「ビールジョッキ3倍飲んだあなた!実はカロリーは600kcalです!」

と言われても、それが多いのか少ないのか、あまり実感が沸かないですよね。


「ビールジョッキ3倍飲んだあなた!そのカロリー、おにぎり4個食べたのと同じです!」

と言われると、「おにぎり4個分って、結構な量だな・・」となりますよね。「じゃあ飲み会のあとの〆にラーメン食べるととんでもないカロリーに・・・今日はやめとこう」となりますよね?


ちょっと例としては違うかもしれません、実感が沸かない、手触り感のない数字を目標として課しても、その達成のために努力したりするものとしては機能しないのです。


ステップ1:大目標を分解する


まずは、一番大きな目標を分解していきます。

コツは「掛け算」です。


例)売上:

  • 顧客数 × 単価
  • 店舗数 × 店舗あたり売上
  • 市場規模 × 市場シェア
  • 販売台数 × 単価  etc.

もちろん、「新規顧客売上 + 既存顧客売上」と、足し算になることは多々ありますが、この場合でも「新規顧客 = ポテンシャル顧客数 × 新規顧客開拓率 × 取引単価」のように掛け算に分解することが重要です。


なぜ掛け算が重要か。

掛け算の数式の要素ひとつひとつが数字を左右する大事な「ボタン」であるからです。


足し算の例:

売上100億円 = 新規客売上40億円 + 既存客売上60億円

→新規客を1.2倍(48億)、既存客を1.2倍(72億)にしても、全体売上も1.2倍(120億)にしかなりません。


掛け算の例:

売上100億円 = 顧客数100社 × 顧客単価1億円

→顧客数を1.2倍(120社)、顧客単価を1.2倍(1.2億)にすれば、売上は1.44倍(144億円)になります


つまり、掛け算にすることで、数字をあげるために何が重要な要素なのか、ということが自然に明らかになるのです。

そして、掛け算の要素はいくら多くても(=細かくしていっても)全体の数字に対する一つ一つの重要度(影響度)は同じです。

例)新規客売上

= A新規客数 × B顧客単価

= a見込客数 × b新規顧客開拓率 × c購入商品数 × d商品単価

要素が2つしかない場合のAを1.2倍にしても、要素が4つある場合のdを1.2倍にしても、

いずれの場合も全体の新規客売上は1.2倍になります。


大きな目標は、掛け算にしてどんどん要素を分解していきましょう。



ステップ2:各要素の中で重要なものを見極める


さぁ、たくさんの要素に分解しましたね!

3つ?5つ?8つ?

掛け算の数式がいくつもあって、要素の数は10を超えているかもしれませんね。

さぁ、この10個の数字を追いかけよう!


・・・


残念ながら、半年後、ちっとも結果が出ないでうなだれる姿が見えます。

人間のリソースは限られています。時間も平等、1日24時間しかありません。

「目標」というだけあって、達成は簡単ではないはずです。

全部追え!全部達成しろ!というのは、マネージャー失格です。


要素は全てが等しく重要、ではありません。

掛け算の数式上は、どの要素も等しいインパクトを持っています。

但し、その要素をあげられるかどうか、それを見極めるのがあなたの仕事です。


では、どうやって重要度を考えれば良いか。

これも単純な掛け算です。


α数字をあげられるポテンシャル × β数字をあげられる可能性

αの例:市場シェア 自社10%vs トップ企業40% → 理論上あと30%まではあげられる

βの例:トップは最近ジリ貧、自社は急拡大している → 頑張ればイケそう


いくら頑張っても数字が5%しか上げられないなら別の要素に注力した方がいいですし、相当ポテンシャルは大きいが可能性はかなり低い(例:全くノウハウも武器もないが中国市場に打って出る)場合は捨てるほうがいい、などです。


全ての経営者は、この考え方を(無意識だとしても)頭の中に持っています。

その上で判断しています。

マネージャーであるあなたも、この考え方をベースに、数ある要素の中で「重要」なものを見極めましょう。


個々人が追いかけられる要素は多くても3つまで。それより多いと結局意識もリソースも分散して達成が難しくなります。一人ひとりが追いかける要素は3つ以内に納めましょう。



後半は、いよいよ一人ひとりの目標設定に落とし込み、「数字があがる」目標にしていきます!

数字は「抱える」のではなく「持てる」ものを(2)に続く




営業マネジメントの教科書

営業課長・営業所長になって、初めて正式に部下を持ったあなた。 メンバーたちはクセモノ揃い、どうやってマネジメントすれば良いのか悩んでいませんか? 上司は担当時代とは桁違いの目標数字を課してきて、呆然としていませんか? 今までのやり方の延長では結果は出ません。 個人ではなく「チームで結果を出す」ために営業マネージャーがやらなければいけないキホン。 ギュギュッとまとめました。