営業マネージャーとは何者か
中間管理職と真のリーダーシップの微妙な半歩の違いは、プレッシャーの下で優雅さを保てるかどうかだろう
優秀な営業マンだったあなたも、今日から部下を持ちチームを率いる「営業マネージャー」です。
しかし、「営業マネージャー」とは何なのでしょう。
言葉の定義で考えると、マネージャー Manager = Manageする人です。
Manageという単語の歴史は、実は意外と浅く、16世紀頃に出てきました。
語源は man = 手 + age = する → 手でさばくことをする
元々は馬を操る意味などで使われてきました。
馬具も何もない状況で、手だけで馬を手なづけて乗りこなし、行きたい方向に駆り立てる。
現在も英語のmanageは「なんとかする、うまくやる、折り合いをつける」などの意味で使われることが多いです。そこから「管理する→経営する」などの意味も派生してきました。
つまり、「営業マネージャー」としてのあなたの役割は、
営業というビジネス&チームメンバー達を、(色々大変だけど)うまく折り合いをつけ進むべき方向に駆り立てていき、経営していく、ということです。
営業マンではない
あなたは優秀な営業マンでした。
しかし、営業マネージャーとなった瞬間、あなたはもはや営業マンではありません。
前述の語源から考えると、あなたはこれまではとても疾く逞しかった「馬」でした。
これからは色々な馬が複数いる馬車の「御者」になるのです。
決して群れの先頭を駆ける「一番優秀な馬」になろうとはしてはいけません。
馬の群れの先頭を率いる馬。
馬の群れを駆り立てて導く御者。
先頭の馬は、まさに「先頭」にいます。前しか見ていません。
後ろの馬は先頭に付いていきます。しかし、ときにはついて行けず脱落する馬もいるでしょう。気まぐれて道草を食う馬も。道を間違えてはぐれてしまう馬も。
先頭で前しか見ていない馬は、そんな状況が分かりません。誰よりも疾く目的地に着き、はじめて周りの状況を見たら、群れがずいぶん減っていた。そんなことが起こりえます。
御者は馬の群れの一番うしろの高いところ、全体を見渡せる位置にいます。
(当たり前ですが)馬と一緒に走ることもしません。
冷静に、全体の状況を把握し、走らない馬がいたら叱咤激励、道を逸れそうな馬は軌道修正、頑張りすぎている馬には適宜抑制します。
そうすることで、最も安全に最も効率的に最も早く目的地にたどり着けるように導く。
それが御者であるあなたの本来の役割です。
営業マンとして担当を持ち個人としての数字目標を持つ、というのは極力やめましょう。
あなたがいくら頑張っても、所詮一人分です。チームメンバーが増えれば増えるほど、チーム全体に対する(営業マンとしての)あなた個人の影響度合いは低くなります。
そこで頑張るよりも、「御者」として馬の群れをどう導いていくかを考えましょう。
「プレイングマネージャー」という言葉がありますが、そんな役割はありません。あくまで「プレイヤー」と「マネージャー」という役割があり、1人が2つの顔を持っているだけです。
どんな人でも1日24時間、なので「プレイヤー」の時間が増えれば増えるほど「マネージャー」の時間が減っていきます。
マネージャー不在のチームは必ず崩壊します。
経営者ではない
名実ともに「管理職」になったあなたは、法律的にも労働組合には入れない「会社側」の人間ともなりました。
常に高みを目指していたあなたは「これで自分も経営メンバーの一員だ」と意気込んでいるかもしれません。
その意識はとても素晴らしいと思います。誰もが経営者だと思って行動する組織は強い組織です。
しかし、意識としては経営者でも、行動も経営者となってはいけません。
あなたはいわゆる「中間管理職」。当然ながら上司もいます。
上司の期待に応え、それを超えていくことがあなたの役割です。
前述の例で言うと、あなたはあくまで「御者」であって、その馬車に載る「貴族」ではありません。
"あんなところよりもっといい場所あるから、そっちの方に行こう"
勝手に目的地を決めてはいけません。
"そんな早く行けるわけない。無理せず安全なペースで行こう"
勝手にスケジュールを決めてはいけません。
あなたの仕事は「貴族」のオーダー通り、行きたい目的地に行きたい時間に安全に定額で届けることです。これが最低限の役割です。
「半期で5億円の売上」「毎四半期で3%成長を継続」など、経営者のオーダーに応えるのがあなたの最低限の役割です。
「貴族」としては、オーダーに応えてくれるなら、どんな馬を使おうがどんなルートで行こうが関係ありません。
経営者としては、予算・目標を達成してくれるなら、どんな手段を使おうが特に関係ありません。
最低限の役割を超えるのがデキる「御者」です。
「貴族」のオーダーの奥にある本当のニーズは何なのか。
「久々のパーティ、一刻も早く着いてみんなの顔を早くみたい」
「行ったことのないところなので道中も道草したりしながら楽しみたい」
それを把握した上で直接的なオーダー以上の価値を提供することで「御者」は「●●さん」になり、「貴族」からの信頼も厚くなっていき、上下関係から徐々に「パートナー」として見られていくようになります。
駆け出しの「御者」であるマネージャーのあなたは、まずは「貴族」である経営者(上司)のオーダーにきっちり応えることが最低限守らなければならない役割と心得ましょう。
「貴族」の気持ちになるのはとても大切です。それは「貴族」の本当のニーズを掴むため。
そしてオーダーを超える価値を提供し続けた先に、本当に「貴族」になれる道が待っています。
こんなに面白いポジションはない
「馬」でも「貴族」でもなく、「御者」であるマネージャー。
じゃじゃ馬ばかりで言うことを聞かず、貴族は好き勝手に色んなオーダーをしてくる。
馬車に御者は1人、仲間もいなくて相談できる相手も少ない。
苦労もたくさんあるでしょう。
「馬」はただただ前を見て頑張って走っていればOK。(大変だけど)
「貴族」は道中おしゃべりしながら座っていればOK。(到着地で色々あるけど)
気楽なもんです。
しかし、馬車全体を操っているのは、他でもない「御者」であるあなたただ1人です。
ルートも決められます。道中のペース配分も決められます。全ての景色を見渡せます。
一番大変で気苦労ばかりの役割と思うか。
一番自由でやりがいのある役割と思うか。
それは全てあなた次第です。
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